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秋田栄養短期大学 コラム「栄養と健康のちょっとイイはなし」
11.蔵と発酵文化の町 横手市 - 廣田由利 (講師)
秋田県の南部に位置する日本有数の米どころ横手市は、周囲を山に囲まれ県内で最も広い平地を有する横手盆地に広がる街です。夏は蒸し暑く、冬には日本でも有数の積雪量を誇る厳しい気候です。しかし、この気候こそが、横手に独自の発酵文化を育んできた背景となっています。
横手市は、古くから街道が交差する交通の要衝として栄えてきました。人と物の流れが盛んだったこの地では、交易や商業が発展するに従い、主人と従業員とが共に汗を流しながらよく働く風土が形成されました。そのため、極端に貧しい者が少ない豊かな経済基盤と町並みが築かれ、特に増田地区には、災害や風雪から商品を守るための「内蔵(うちぐら)」を備えた商家が軒を連ね、現在までその繁栄の様子を伝えています。明治時代には「増田銀行」が設立され、地域金融の礎ともなりました。そして現代、横手市増田地区はこの歴史的な蓄積を活かした「蔵の街」と気候風土を生かした味噌・醤油、漬物、日本酒等の発酵文化を掛け合わせた町おこしに力を入れています。
発酵食品の代表である横手味噌は、米麹の割合が高く、自然な甘さとコクが特長で、その味わいは、寒暖差の激しい気候と、長期保存が求められる風土が育んできたものです。現在、地元の味噌を中心に発酵食品の魅力を再発見し、積極的に発信しようという取り組みが進んでいます。一例として、味噌店舗「くらを」さんでは、誰でも気軽に参加できる味噌玉づくり体験というイベントを実施し、発酵の知識や楽しさを広めています。これにより、多くの観光客を集めるとともに地域内交流も活性化しています。また、「新山食品加工場」さんでは、味噌や発酵食品の販売は元より、発酵文化の紹介にも力を入れており、食文化の継承とともに魅力発信の一翼を担っています。
こうした地域の動きを、横手市役所も行政として積極的に支援しています。横手市は、小学校から大学に至るまでの幅広い教育機関と協力し、連携プロジェクトとして発酵文化をテーマにした授業や体験活動を展開しています。これにより、次世代への文化の継承とともに、地域への愛着や帰属意識の育成を目指しています。
なお急速な人口減少が進む秋田県では、横手市をはじめとし、こうした町おこしを手がかりに地域活性化と人口減少対策を進めています。
※参考文献:秋田増田の内蔵 増田細見読本
