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秋田栄養短期大学 コラム「栄養と健康のちょっとイイはなし」
6.「糞便移植で健康に? 」大西哲生(准教授)

「糞便移植」「腸内細菌移植」ということばを聞いたことがある方は、そうとうな健康オタクかもしれません。それはちょっとした冗談ですが、そのぐらいまだ一般の方の耳にふれる程にはなってはいない言葉ということです。

「糞便移植」の前に、まずは腸内細菌の話をしましょう。人のうんち(便)には人間が摂取したもののうち消化吸収されなかったもの、加えてそれらの一部を「えさ」として繁殖する「腸内細菌」が大量に含まれています。なぜかというと人の消化管(おもに小腸後部と大腸)にはおびただしい数と種類の腸内細菌が同居しており、その一部は便と一緒に排泄されるからです。一人の人間に同居する腸内細菌の数は、一説では100兆個、重さにして1.5-2kgだと言われています!我々の体重(50 kgの女性だとして)のなんと4%が腸内細菌の重さとはちょっと信じられない感じもしませんか?

前述のように腸内細菌には非常に多くの種類がありますが、大きく分けて、善玉菌、日和見菌(普段はおとなしいが腸内環境によって悪玉化することがある)、悪玉菌(時に毒素などを放出したり、善玉菌の働きを抑制するもの)に大きく分類されています。

最近の研究では食生活や年齢などによってそのバランスが大きく変動することが判明してきており、さらに重要なことにそのバランスの乱れが人間の健康状態に大きな影響を与えることも判明してきました。例えば、肥満の方では腸内細菌の種類が減少して悪玉菌に偏っていることや、善玉菌の一部は水溶性食物繊維を餌に増殖し、短鎖脂肪酸と呼ばれる代謝物を生み出して肥満を抑制することなどが判明しています。

10年少し前のアメリカの研究グループからの報告では、太った人から採取した便に含まれる菌を大腸内に移植した実験用のネズミ(マウス)は脂肪がつきやすく肥満傾向となり、逆に痩せた人の便から採取した腸内細菌を移植したマウスは太りませんでした。これは腸内細菌のバランス異常自体が太りやすい体質を形成するのではないかということを実験的に示すとともに、人でもなんとかして腸内細菌を「痩せタイプ」に入れ替えれば、太りにくくなるかもしれないということを示しています。また、肥満以外でも腸内細菌のバランスに異常と病態の関連が示唆される疾患が見つかっています。

現在では、国内のいくつかの大学病院では「糞便移植(腸内細菌移植)外来」といったものまで開設されるまでに至っています(現在のところ減量を目的とした糞便移植療法が行われているわけではありませんが)。糞便移植療法がどのような疾患にどの程度有効なのか、今後の医学の発展に注目していきましょう。

当然ですが、良好な腸内環境を維持するためには、バランスの良い食事を心がける、過食をしない、善玉菌を増やす食物繊維(とくに海藻等に豊富に含まれる「ネバネバ系の」水溶性食物繊維)を十分に摂取する、適度な運動習慣を継続する、そして腸内細菌のバランスに影響を与えると判明しているストレスをためすぎない生活を心がける、といったことが重要なのはいうまでもありません。