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秋田栄養短期大学 コラム「栄養と健康のちょっとイイはなし」
7.「メタボリックシンドロームは胎児期の『記憶』から? 」大西哲生(准教授)

高血圧や2型糖尿病といったメタボリックシンドロームは、「生活習慣病」という言い方がなされることは多くの方がご存知かもしれません。その言い方にはその人の「生活習慣(食生活や運動)が不適切だから」「その人のせいで」その疾患になるのだという意味合いが含まれています。

しかし最近では、メタボリックシンドロームになりやすい体質は、遺伝的にある程度規定されている(親から引き継いだ遺伝的体質が重要である)ことも判明していますので、「その人の心がけが悪いせい」だけで説明できるわけではないことは明白です。

さらにもう一つ重要な視点があります。胎児期・乳児期の栄養状況(母体からもたらされる栄養的な状況)が、将来のメタボリックシンドロームの発症リスクの形成に大きな影響を与えることが明らかになってきたのです。

このようなことが判明してきたきっかけとなったのは、「オランダ飢餓の冬(Dutch Hunger Winter)」と呼ばれる疫学的事象です。第二次世界大戦中にナチスドイツは、オランダへの食料補給路を一時期封鎖し、その当然の帰結として住民は極度の飢餓状態に陥ってしまいました。このとき、住民は必要カロリー数の半分程度しか摂取できなかったと言われています。
このような栄養環境下で母親の体内にいた胎児の多くは、母親の栄養摂取不足のため低体重出生児となりました。その子どもたちが成長後に、どのような疾患にかかったかを調べた調査から、衝撃的な事実が明らかになりました。肥満や糖尿病といった今では生活習慣病と言われる疾患の罹患率が、それ以外の時期に生まれた人たちもより極端に高かったのです。

その研究結果はやがて、胎児期に飢餓状態を経験すると「出生後も食べものが十分でないことを予測して」胎児自らが遺伝子の働きを「エネルギー節約モード」に「プログラム変更」してしまい、出生後(戦争が終わって)通常の栄養状況に戻って生育すると、その節約モードの「プログラム」が仇となり、脂肪を蓄積しやすい体質のまま成長し、将来の生活習慣病発症の基盤を作ると解釈されました(「胎児プログラミング仮説」といいます)。
驚くべきことに、このような代謝系の疾患だけではなく、思春期以降に発症する統合失調症などの脳関連疾患の罹患率も「オランダ飢餓の冬」のような飢餓状態を母親の胎内で経験した人たちの間では上昇したという報告も複数なされ、注目されています。

こういった結果からは、胎児期の胎内環境の将来の健康への重要さがわかるとともに、今の若い女性の行き過ぎた痩身願望(やせ願望)やダイエット願望は相当心配になります。その強い願望が「飢餓状態」の胎内環境を自ら作り出してしまうことになってしまうとしたら、そのような母体から生まれた子の将来の健康はどうなってしまうのかと考えてしまうからです。