平成31年4月2日

平成31年度ノースアジア大学・秋田栄養短期大学 入学式
  ―学長告辞 


ようやく春らしい日差しが感じられるようになってまいりました。このよき日に本学に入学した諸君に、大学を代表し歓迎をいたしたいと思います。ご参列されています皆様にも、心から御礼とお喜びを申し上げる次第です。

さて、皆さんは、これからは学生として勉強をすることになるわけですが、ここで私は大学ではどんな風に勉強したらいいかということを、少しお話しておきたいと思っています。

大学で勉強の仕方について迷う学生がたくさんいます。それはなかなか難しいんです。当たり前のことですが、何でも学ぶことについてはコツというものがあります。大学の勉強だって一緒です。このことを間違えてしまうと勉強の効果が出ない。非常にここは大事なところだと思うんです。

高校とどう違うか。高校では、授業で先生が手取り足取り説明をしてくれます。それを覚える、そういうことに勉強の中心が置かれます。しかし、大学での学問はこれとは異なって、さらに自分で考えてみる、疑問を持つことが大切なんです。

高校の勉強では正解があった。しかし、大学での学問は、何が正解かということが分からない場合がある。あるときには正解が無い場合もあるんです。一体何が正しいのか、それも時間とともに実は変わってきます。

私は、法学部で教員をしておりましたけれども、例えば刑法で、刑法60条に共同正犯というものを規定しています。二人以上の者が共同して犯罪を実行したときは、皆、共同して正犯として責任を負わなくてはいけないことになっています。ところが、謀議に加わっただけで、実行行為をしていないのに正犯としての責任を負わせることができるかということは、かつては非常に大きな問題でした。

最高裁の判例と一部の少数説は、犯罪の現場で犯罪行為に関与していなくても、共同謀議に参加しただけで犯罪全体の責任を正犯として負わなくてはいけないということを言っていたんです。これは、刑法60条の条文をよく読んでみると、明文には反している。このように解釈するのは、問題だといわなければいけないと思います。そこで通説は、つまり普通の学説は、謀議に参加しただけでは正犯とは言えない、この60条の共同正犯が成立しないと言っていたんです。

通説の方も、判例が言うように、背後にいる黒幕を重く処罰しなくてはいけないのではないかという考え方には、同調していたんです。しかし、条文でそのように規定していない。そういうものを処罰していいかという、非常に大きな人権上のジレンマが生じたのです。

私も当時のこの通説的な考え方に立って、裁判や検察の実務とは違う考え方で勉強をし、答案を書いていました。しかしそれでも法律学の世界ではいいんです。答えは一つではない。どの考え方も、それぞれ一長一短があって、どういう風に問題をとらえたらいいかというのが非常に大切だということなんです。もちろん反対説に立って答案を書いても、立派な合格点をつけてくれます。

このように、何が正解かということについては必ずしも固定的なものではないし、また、それは時代ととともに変わっていくものなんです。

その少数説であった共謀共同正犯を肯定する説は、時代を経て多数説になり、今や通説にまでなっています。ほんとうに、学説が時代とともに変わるんです。

皆さんご承知のように、壊血病という病気があります。体中から出血し、脳の血管からも出血し、最終的には脳出血をはじめ、さまざまな器官不全の問題が発生して死亡に至るという、大変恐ろしい病気でした。ドイツを中心とする学派は、壊血病は細菌が原因の病気であると考えたんです。ところが、野菜を1週間くらい食べていると、ぴたりと病気が治ってしまいます。単なるビタミンC欠乏症だったということは、皆さんもご承知のとおりです。ビタミンCが血管のコラーゲンを作るんです。たんぱく質の合成には欠かせないものなんです。

第一次世界大戦で日本軍はロシア軍と戦いましたけれども、ビタミンC欠乏症に陥ったロシア軍は、たくさんの死傷者を出し結局戦争で負けてしまったということがありました。何ということはない、持っていた大豆を水に浸けて放っておけば発芽してビタミンCができたわけで「知は力なり」と言いますけれども、知らないために壊血病になったんです。それで、たくさんの人が死んだんです。

ご承知のように今、医学の世界では、遺伝子治療という白血球などのゲノムを編集して治療していく、かつては信じられないような考え方が生まれてきています。ですから皆さんは、絶対的にこれが正しいというものがないという気持ちで是非疑問を持って学問をしていただきたいと思うわけです。

勉強は「強いる」「勉める」という字を書きますけれども、面白くないものと相場が決まっていました。私は違うと思います。学問ほど面白いものはない。

江戸の儒学者で伊藤仁斎という人がおりますけれども、この人は、もとは材木屋の息子です。商売の手伝いをしながら勉強をして、いつの間にか学者になってしまった人です。「学問ほど面白いものはない」そう言っています。私もそう思います。

私は、勉強が面白くなるためには、集中して考えてみる、疑問を飛ばさないで我慢して、そこに踏みとどまって、ずっと考え続ける、歩きながら喫茶店に入っても、お風呂に入ってもその問題を考えてみる、そういう姿勢が大変大事だと思っています。そうすると勉強が俄然面白くなってくる。そして自信がついてきます。単に知っているか、知らないかということではなく、問題の本質は何か、どう解決すべきか、そういうことを飛ばさないで踏みとどまって考えてみるということが非常に大切なんです。

今、スマホの弊害ということが言われています。ブルーライトや電磁波の問題、その紫外線が網膜や脳の神経を壊してしまう。スマホやパソコンなどが発する電磁波の危険ということが散々いわれてきております。ブルーライトを長時間にわたって浴び続けると、交感神経が緊張し続け、夜も熟睡できなくなってしまいます。朝起きられない。日中ぼーっと過ごすような状態になっています。引きこもりや登校拒否の原因になっているんです。今、高校生で、男子高校生が平均的に3時間近く、女子高校生が4時間近い時間、スマホを使うということが言われています。また、現在、病院で、スマホ外来という診療科ができてきています。保険が利く正式の病気として認められているわけです。

皆さんは、なるべくスマホなどを使う時間を少なくして、是非、早起きなどを心掛け、できる限り本を読んでいただきたいのです。社会に出るとなかなか勉強する機会がなくなってしまう。この大学の4年、あるいは2年の間に、是非何世紀もの時を経て評価されてきた質の高い書物を読んでもらいたいと思います。

皆さんが、ノースアジア大学、秋田栄養短期大学に入学して良かった、しっかり勉強もした、人生をどう生きていくかも考えるようになった。そして就職は、今度は非常に狭い専門分野に進むことになりますが、そういう選択ができたのも、大学で勉強したおかげであるというような、そういうような充実した学生生活を送っていただければと思います。

皆さんは大学の教員というと敷居が高いと思いがちですけれども、皆さんが研究室に訪ねて来ていろんな質問をぶつけてくれることを望んでいます。そして皆さんが、健康で悔いのない学生生活を送られることを念願しております。

御来賓の皆様、御父母の皆様にもこの場を借りてお祝いと御礼を申し上げ、告辞といたしたいと思います。入学、大変おめでとうございます。ありがとうございます。

 

学長 小泉 健